スプリット

スプリットを見ました。「シックスセンス」のM・ナイト・シャマラン監督が送るスリラーホラー映画です。

これはネタバレなしには語れない!という感じなので最初からネタバレは全開です。続きを読むからどうぞ。

 

 

つまりこの作品は2000年公開の映画「アンブレイカブル」の続編であり、ヴィラン役のエピソード0だったのだ…!というのが本作の衝撃の結末ということなのですが。もちろんアンブレイカブルを見ていないと「?」となってしまうわけですよね。

これはシャマラン監督のファンにはたまらないだろうな~。この映画を120%楽しめるのは今まで監督の作品を追ってきたファンたちで、それを抜きにしても本編だけで充分楽しめると思います。でもスプリット2回目を見る前にアンブレイカブルをレンタルしたので、2回目はむちゃくちゃ面白かった…ラストの音楽が流れてきたときはもう…。アンブレイカブルってあんまり評価が高くなかったそうですが、普通に面白かったし私シャマラン作品と相性いいかもしれない…。

さてスプリット本編ですが、ジェームズ・マカヴォイが23人格の男を演じる…!と言われても「そうなんだ~」くらいに思ってたんですけど、実際に見るとこれが本当にすごい!23人格って多すぎじゃ…?同じ顔なんだから混乱しないかなって思ってたんですが、表に現れるのは9人くらいで、演じ分けもきちんとしていて全く混乱しません。そもそも同じ顔なのに人格によって表情が全然違った。本当にすごい。

私はこの映画2回見たんですけど、ケイシーの生い立ちがわかると彼女の行動にとても説得力が出てなるほどと思いました。冷静すぎると思っていた彼女は抵抗すればもっとひどい仕打ちを受けるとわかっていたのですね。そして自分より弱い立場、9歳だというヘドウィグを利用しようと試みる展開もいい。窓があるのね?→窓の絵(可動式)は面白かった。 

シャマラン監督の手法がそうなのかもしれませんが、受け手に想像させる作品なので全てが語られているわけではありません。私は、度胸試しとしてデニスに胸を触らせたのはケイシー以外の2人であり(ヘドウィグが3日間追ったと話していたので)このハラスメントがきっかけでビースト誕生へと繋がったのだと思いました。実際にハラスメントを受けケビンを守らなくてはと思うデニス、信仰心の強いパトリシア、それから周りに馬鹿にされたくないヘドウィグは群れとなり、照明を奪えない二人に変わってヘドウィグがバリーから照明を盗むという展開。バリーは3人の異変に気付いていて不安になっており、また別の人格は隙を見て先生にメールを送る。そのあと埋め合わせのためにデニスはバリーに成りすまして先生に会いに行く。ここ、デニスが先生の部屋の本やチョコレートの位置がどうしても気になってしまうのがいい。

儀式の日は最初から決まっており、花束を列車のホームに置いたのは列車事故で亡くなったケビンの父親に対してだと思うんですけど、もしかして儀式の日は父親の命日(列車事故の日)だったのでしょうか(これはちょっと深読みかも)ビーストは強くケビンを守ってくれる存在、それはもし生きていれば母親の虐待から守ってくれたであろう父親に由来しているのではと思った。この列車事故アンブレイカブルに繋がっていると思うので続編を待ちたいです。

さらわれた二人はビーストの生贄となり、逃げるケイシーは追い詰められますが、彼女の身体に残る痛々しい虐待による傷を見て、ビーストはケイシーを祝福します。「私たちは傷ついた人間を劣っていると思っている。しかし本当はその逆なのかも」と先生が序盤に世間話として言うセリフですが、これこそこの映画の重要な部分なのですね…。

ケイシーが本当に逃げるべきなのはあの地下室からではない。迎えにやってきた叔父さんに彼女がどう立ち向かうのか。私はこの映画前向きに捉えたので、彼女はきっと大丈夫なのだろうと思いました。その背中を押したのがあのビーストという存在なのだと。