視点を変えて見るベイマックス

ディズニー長編アニメーション第54作目「ベイマックス」

DVD/BDが発売されたからか、公開してすぐ別ブログで私がネチネチと気味悪いほど長文で語りに語った記事にアクセスが結構あったのと、何度か見返して改めて感動したことがあったので文字にしてみた次第です。

もちろんネタバレを含みます。

 

ベイマックスはサンフランシスコと日本をモデルにした架空都市サンフランソウキョウを舞台とした作品であり、ディズニーから日本へのラブレターといわれています。誤解されがちですが、いわゆるドラえもんのような少年とロボットの日常アニメではなく、ヒーロー誕生までを描いた言わばエピソード0的な物語。

 ベイマックスは娯楽の教科書のような作品です。面白い、かわいい、楽しい、感動、だけではなく、添えられたメッセージも深くすばらしいものでした。その「人が死んでも残された人の心の中に生き続ける」というメッセージは具体的にはどういうことだったのでしょうか。

 

公開に先駆けて、NHK特番「魔法の映画はこうして生まれる」が放送されました。ディズニー・アニメーション・スタジオを長期取材したものです。*1

DVD/BDが発売されてますので、ご興味があれば。

製作チームは「タダシの死」に纏わるヒロの心情をどう描くのか悩んでいました。その中で製作総指揮のジョン・ラセターが、ストーリー会議でこのテーマを提案する様子がおさめられています。以下は彼の言葉の引用です。

誰かが死んだとき、その人はすでに残されていた人の一部であり、なにかしら重要な影響を与えてくれる存在になっているのではないだろうか。
人は死んでも本当はいなくなっていない。いつも残された人の中に生きている。人は亡くなっても愛する人に影響を与え続ける。その影響で残された人はよりよい人間になれるんじゃないか。

 

冒頭、ヒロが「僕たちの中で生き続けてるなんて、みんなそう言うけどさ…」そう言って鼻で笑うシーンがあります。

しかしヒロは作中、何度もタダシと同じ台詞を言ったりタダシと同じ行動をしたりするんですよね。とくに「視点を変えてみるんだ!」は最終決戦で重要なヒントになります。ヒロがアビゲイルを救うためにポータルの中へ向かうのも、タダシが教授を助けるために火事の中へ向かったのを見たから。タダシの言葉や考えが自然とヒロのものへと変わっているのが分かります。これこそ、タダシがヒロの中で生き続けている証です。

人が死んでも、残された人の心の中に生き続ける、とはどういうことか。このテーマを言葉で長々と語ることもなく、ヒロ、そしてベイマックスからもタダシの存在を浮き立たせています。タダシのトライ&エラー映像を見て、ヒロが自発的に自分の使命を悟るシーンもすばらしい。

 

*1:NHKが世界で初めて長期密着を許された貴重な番組。NHKが「“ポニョ”密着300日~」(08年)の映像を送付して交渉。宮崎駿が大好きなラセターが「こういう番組ならいいよ!」と異例の撮影を許可をしたこともついでに知ってほしい。世界初!NHKがディズニー最深部に潜入 - 芸能ニュース : nikkansports.com